吊機って何?
吊機とは、希少な旧式の編み機。
吊機とは、ニット生地を編み立てる旧式の編み機です。日本には1900年初頭から輸入されはじめ稼働台数も増えていき、1960年代まで日本のニット産業界の第一線で活躍しました。その後大量生産、大量消費という時代の波が押し寄せます。量産を重視した高速の編み機が主流になっていき、生産性や採算性が極めて低い吊機は使われなくなり、姿を消していきました。さらに機械メーカーも生産を終了し、多くの吊機が廃棄処分されました。今日では現存する吊機も少なくなり、生地を編むのに職人の熟練した技や経験が必要なため、吊機を稼働させる工場は世界的にみてもごくわずかになりました。
独特の豊かな風合いがある。
吊機は生産効率が低い分、生地を編むときに糸に余計な力をかけないうえ、編み上がった生地も強制的に巻き取りません。そのため吊機で編まれた生地は、洗いこむほどに実感できるやわらかさや、まるで手編みのような温もり、独特の豊かな風合いを持っており、その特性を長期間保ちます。1960年中頃までのヴィンテージと呼ばれる スウェットシャツのほとんどにも、吊ニットが使用されていて、何十年も経った現在でも多くのファンを魅了し続けるのに一役買っています。
名前の由来は、吊られているから。
「吊」という名前の由来は、編み機が梁(はり)に吊り下げられている事からきていて、吊り編み機とも呼ばれます。また日本に輸入され始めた当初、機械がスイス製だった事もあり、スイッツル(Switzer)ともいいます。天竺(主にTシャツ等に使用)、ウラ毛(スウェットシャツ等に使用)、鹿の子(ポロシャツ等に使用)など、各種シングルジャージーを編みたてることができます。生地が筒状に編み上がっていく丸編み機の一種に属します。近年では衣類のみにとどまらず、家具や帽子など、様々な製品に吊ニットが使用されています。
生地を編む構造の違いが、その独特の風合いを生み出す。
吊機はなぜ独特の風合いをもつ生地が編めるのか?それは生地を編む構造にあります。吊ニットは、編み針が固定された台座がシャフト中心に回転し「シンカーホイール」という固定パーツを通るときに生地が編まれる仕組みになっています。この生地になる時に糸は過度に引っ張られません、つまり糸が常にリラックスした状態で空気を含みながら編み上がっていきます。この構造こそが吊ニット独特の風合いを生み出すのに重要な役割を果たします。このシンカーホイールは臍(ヘソ)またはヘソ車と呼ばれます。それでは高速丸編機との比較のページでさらに詳しく吊機の秘密に迫っていきましょう。