高速丸編機との比較

生産効率が全然違う。

吊機と現代の高速編み機では一体何が違うのか?それでは両者で一般的なウラ毛を編む場合を例にあげて比較していきましょう。画像の吊機は弊社で一番口径の大きい(幅の広い生地が編める)機械です。今回は同じぐらいの生地幅が編めるシンカー編機と比較していきます。まず全体を見くらべると、機械に挿入されていく糸の数の違いが目立ちます。これは給糸口と呼ばれる、糸が機械に挿入される部品の数に違いがあるためです。吊機は給糸口が1セットから2セットしかありませんが、シンカー機は24セットもあります。つまり機械が一回転すると吊機は1コース(列)から2コースしか編めませんが、高速機は24コースも編めます。仮に同じ早さで機械が回転すると、吊機が1時間に1mしか編めないに対して、シンカー機は24m編めます。さらにシンカー機の回転数が上がればその差は開きます。また生地の種類によって、シンカー機にはさらに多くの給糸が可能になる事もあり、その場合はさらに何倍も差ができます。生産効率に大きな違いがあるのはこのためです。吊機の生産能力は、編み立てる生地や機械の大きさによって異なりますが、最高でも20分の1程度しかありません。

ヒゲ針が空気を含みながら、やわらかく編み上げる

次に編み針の違いです。左が吊機に使用される「ヒゲ針」で右が高速丸編み機用の「ベラ針」です。吊機の独特の風合いを生み出すのに、なくてはならない存在のこの「ヒゲ針」は特殊な編み針で、現在ではグロッツベッケルトというドイツのメーカー1社がかろうじて生産を続けているという状況です。機械の口径にもよりますが1台の吊機に取り付けられるヒゲ針は、1000本以上にもなります。ヒゲ針は台座に固定されたままなので、空気を含みながらやわらかい生地を編み上げていきます。一方のベラ針は可動式で常に糸を引っ張りながら生地を編みます。生産効率は良くなり、均一に整った編み目の生地が編めます。

編み上がった生地にも負担をかけない。

編み上がった生地です。吊機は生地の自重でたらいに溜まっているのに対して、高速機は下から強制的に巻き取っています。強制的に巻き取るという事は、編み上がる瞬間にも編み針や糸に常に力がかかり、編み上がった生地も引っ張られています。吊機は編み上がった後も生地を無理に引っ張ることがないので、その風合いを保つことができます。

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